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郷に入れば郷に従え

今朝のワイドショーでシンドラー社のコメントが全く“謝罪していない”と言っていた。
まぁ、外資系企業だから日本人が求めるような謝罪はしないよね、とは思っていたけど、ちょっと興味があって、シンドラー社のHPを見てみた。


本社前で行われた報道関係者向け報告について

2006年6月7日 06:30PM


プレス各位殿


あらためて、今回の事故にあたり、被害者の方のご冥福をお祈り申し上げます。ご遺族の方々には心より哀悼の意を表します。

シンドラーが14ヶ月以上保守をしていないエレベータで起きた事故の原因を解明し、真相を明らかにすることが第一であると考えており、そのため弊社の技術者、保守員が現場検証に直接協力するなど、捜査当局による捜査に全面的に協力しております。

公表されている情報が少ないために懸念を抱かれることがあることは理解しておりますが、我々は捜査当局の捜査を尊重し、必要なプロセスに従うことが重要だと考えております。シンドラーは社会に対する責任を持っており、一日も早い原因の解明にこれからも全力を尽くして参ります。

シンドラー製品の中には、弊社が保守を行っていない製品があります。それらの製品を含めて、シンドラーが提供している製品に対し、必要な全てのサポートを引き続き提供いたします。

シンドラーはエレベータ業界で世界第2位であり、世界100カ国以上で製品を販売しております。世界で、シンドラーの製品を毎日7億5000万人の方が利用されています。シンドラーの製品が業界の高い基準にて設計されています。

シンドラーの製品が安全で信頼できる製品であることを理解していただけるよう、できるだけ早期に事実解明して、皆さんにお伝えいたします。

本日は警察の捜査員が来られましたので、弊社の責任者が捜査に対応しており、皆さんにお会いすることができません。来週の早い時期に、皆さんにお会いする機会を持ちまして、弊社の経営陣による記者会見を開きます。記者会見の日時と場所については、皆さん(注)にご連絡いたします。


シンドラーエレベータ株式会社



他に、2つコメントが掲載されているものの、謝罪は全くなく、「この事故が(シンドラー製の)エレベーターの設計や設備によるものではない事を確信している」と言っているだけ。


これじゃ、日本では受け入れられないよね。
シンドラー社は、マニュアルに従って、「責任の所在がはっきりするまで謝らない」を貫くつもりなんだろうけど、ここは日本なんだよねぇ。。。
謝ったら責任を認めたことになってしまうアメリカではないし、シンドラー社の本拠地であるスイスでもない。
事故に第一義的に責任がないとしても、自社の機器が事故の原因、引き金を引いたのだとしたら、日本では謝罪するのが当たり前。
寧ろ原因の判らないウチの早い謝罪は世論に受け入れられて、後の裁判で“有利”に働く事も多い。
第一、早い謝罪で“世論”は納得するものね。
でも、今回のように、“わが社の製品を使っての事故だけど、長くわが社の保守を受けていないのでわが社に責任があるかどうか判らない」なんて言ってしまうと、“世論”は反発する。
そして、“シンドラー社製のエレベーターで他に事故は起きていないか”と、あたかも“犯人”が“シンドラー社”であるような探索が始まる。
シンドラー社にとっては、痛くもない腹を探られるかのような思いをすることになるよ。
それは、シンドラー社が世界で第2位のシェアを持つ企業だなんて関係ない。
まして、1日に7億5000万人が利用しているなんて全く関係ない。
関係あるのは、その7億5000万人のうち何人が怪我をしたか、その7億5000万人のうち何人が(エレベータの予期しない動きで)“怖い思い”をしたかだけ。

日本には、「郷に入れば郷に従え」という言葉があることを、シンドラー社の人間は知らなかったみたいね。
日本では日本の消費者に受け入れられる行動をしなければ、売れないのよ。
世界でシェアがあるだけでは、日本の消費者は受け入れない。
シェアがある事と“品質のよさ”はイコールではないからね。
日本は、品質に対する感覚が鋭くて、その上で品質は良くて当たり前、品質が消費者が求めるものを満たして初めて価格競争に入れるのよ。
今の日本では、価格が安いから品質がそこそこ、と言うのは許されないのよね。

日本で受け入れられるには、“安い”だけでも、“海外でシェアが高い”だけでもダメって事なんだよね。
それは、今では“観光名所”になった感すらある「IKEA」が、20年前に日本から撤退しなければならなかった理由を考えればわかる事。
日本に消費者って、品質は当たり前に“ほぼ完全”を求め、価格は安いに越したことはなく、更にプラスアルファを欲しがるのよね。
それは、多くの場合、企業の“責任感”だったりする。
海外の企業で日本に何かを売ろうとする会社は、日本の消費者の品質と価格に対する“感性”の研究をしなきゃね。

Comments:7

彩庵 2006年6月11日 19:53

>価格が安いから品質がそこそこと言うのは許されないのよね
欧米の多くは、これを結構割り切っていますね。
最低限が満たされていれば良いという感覚とでも言うんでしょうか。

だからこそ米国で韓国メーカーの車が売れていたりするわけで、韓国は「品質が優れていると評価された」と勘違いしているようだけれど、安いわりには最低限を満たしているというだけの評価。
日本ではこういうのって認められないからこそ現代の車が日本で全くといっていい程売れない理由になっている。

シンドラーの失敗は、欧米の文化をそのまま日本でも通用するって思っている点でしょうか。
郷に入っては郷に従え・・・ドイツの自動車販売会社は最近になって理解してきたようですが、お隣のスイスでは浸透していないようで・・・

ARDBEG 2006年6月11日 20:07

確かにこのコメントじゃ、シンドラーは日本市場を完全に失いますね。
保守点検契約は確かに大切だけど、製品に対する責任が微塵も感じられません。
この会社は「売りっぱなし」のイメージで沈没しそうな予感がします。
信頼は大切な商品なのにね。
惜しい事です。

COO 2006年6月11日 23:24

>彩庵さん
 >>価格が安いから品質がそこそこと言うのは許されないのよね
> 欧米の多くは、これを結構割り切っていますね。

 日本には、「安かろう、悪かろう」という言葉もあって、
 極端に安い商品は品質の悪いものとして、受け入れない文化もありますよね。

 以前、アメリカのある企業に日本のある企業が輸出・納品したとき、
 歩留まりを97%と設定したところ、日本の企業の製品の不良率は1%以下で、
 余分の2%強の製品が返品されたと聞きます。
 多分、欧米では、事前に取り決めた“最低限ここまで”をクリアしていれば充分なのでしょうね。
 そして、その“取り決め”も日本的な“行間”ははっきり示されていなかったのかと。。。

 ドイツは日本で車を売るために日本の“文化”を相当勉強したのでしょうね。
 スイスのシンドラー社はこれからなのでしょうか。。。
 もしかして、スイスの教科書では日本人は未だ刀を差しているかもしれませんし。。。(^^ゞ

 でも、「郷に入れば、郷に従え」を全く知らないのは、ブッシュ・アメリカですよね。。。


>ARDBEG さん
 ですよね<日本市場を完全に失いますね

 日本では、装置は売りっぱなしには出来ないし、
 仮に販売後の保守が原因だとしても、人は“エレベーター”に書かれている名前しか見ていないのですから、
 先ずは自社製品で起きた事に謝罪し、原因がわかってから相手先に損害を請求すればよいだけの事。
 多分、この辺のプロセスが欧米と日本では違うのでしょうが、
 欧米の商習慣を持ち込んでも、コンシューマーには受け入れられないですよね。。。


彩庵 2006年6月12日 09:56

>でも、「郷に入れば、郷に従え」を全く知らないのは、ブッシュ・アメリカですよね。。。
間違いありませんw

未だに大統領自らが営業する国ですからねぇ~

COO 2006年6月13日 00:28

>彩庵さん
 ブッシュは政治的なセンスZEROの人ですから、困ったものです。。。
 もう少し。。。常識的なセンスがあれば、
 アメリカ基準でOKでも、日本基準をクリアしていなければ
 日本の消費者に受け入れられないという事を理解できるのでしょうにね。。。

まる 2006年6月13日 08:49

シンドラージャパンの日本人社員ってほんと、できない社員だね。
少なくとも日本人なら、こんな対応すればどんな結末が待っているか?日本人の感情は知っているだろうに。
損害賠償で失う金よりも、この対応で失った利益の方がはるかにでかいね。

シンドラー製のエレベーターの故障件数から、海外でも死亡事故がおきている事から利用者には良い情報になったよ。
シンドラー製のエレベーターを設置しているところでは、少なくとも乗り降りは注意しないと(笑)
これからマンションを購入する人は、エレベーターはチェックポイントだろうし(笑)

だいたい、ブレーキパッドが磨耗していても、こんな事故が起きたらダメでしょー。
エレベーターなんて、落ちたら利用者が死ぬ類の乗り物なんだから二重三重に安全装置が働くんじゃないの?
点検中にとかは聞くけど、乗降中に勝手に動いて、天井との間に挟まれたなんて聞いた記憶無いですよ。
実際は、どうなんだろう?

COO 2006年6月13日 12:04

>まるさん
 きっと、本社からの「マニュアル」があって、日本人社員も逆らえずにそのとおりに動いたのでしょうね。

 確かに、これまで昇降中に人が挟まれたなんてあまり聞きませんね。
 シンドラー社のエレベータはドアが閉まっていなくても昇降するらしいですが、
 他の多くのエレベータはドアが完全に閉まらないと昇降しない仕掛けになっていますものね。

 これから住居(マンション)を買う人はエレベータもチェックポイントになるのでしょうが、
 公共住宅や大学などの(準)公共施設で既にシンドラー社のエレベータが入っている
 所では利用者が注意しないといけないのね。。。
 おちおちエレベーターにも乗れないなんて、厄介な世の中ね。。。

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シンドラーエレベータが沖縄都市モノレールにも from 沖縄県那覇市@情報ブログ【沖縄県那覇市の情報銀行です】 2006-06-17 (土) 01:57
沖縄県那覇市の那覇空港駅から首里駅までを結ぶ「ゆいレール」でシンドラーエレベータが使われていることがわかり、使用中止になりました。

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