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産みたくても産めない女性たち

 女性科学者の代名詞ともいえるマリー・キュリーには2人の娘がいた。ところが、現代日本のマリーたちは1人の子どもを産むことすらままならない。科学技術分野での女性の能力活用がいわれ、理工系を目指す女子学生が増える中、このままではせっかくの意欲を阻害しかねない。

昨日の日経夕刊の“生活”欄の記事。
最初にこの一文を読んだ時、此処でいう“意欲”って何だろう?と思った。
何となく、この一文の流れでは、阻害されているのは“働く意欲”だと読めたからだった。

冒頭の文章は記事の最初のつかみの部分なのだけど、本文にはこんな文章が続く。

(1/24)女性科学者、子どもが産めない――公的サポート欲しい、ポスト・研究の遅れに不安

 次の数字をご覧いただきたい。男性の未婚率30.1%に対し、女性は51.7%。平均の子ども数は男性が40代前半で1人を超えて50、60代では約2人いるのに対し、女性は40代後半で1人に達して以後横ばい。大学や公立研究所では40代女性の半数は子どもがいない。
 これは理工系の学会が組織する「男女共同参画学協会連絡会」が、昨年発表したアンケート結果だ。民間企業では均等法世代以降、男女差が縮まっている。しかし大学や公立研究所では改善していない。アカデミックな分野の女性科学者の前には、結婚・出産をためらわせる壁があるようだ。

雇用機会均等法は、昭和61年に施行された。
その頃の均等法は、あくまでも“努力目標”であって、違反しても企業に対する法的な罰則はない。
現在42歳の私が均等法以前の世代と言う事は、40代と言えば多くがこの均等法すらなかった世代になる。

戦後の男女同権教育も実を結んできて、学校を卒業するまではどんな事をするにも男性と女性は“権利”という事に関して区別される事は殆ど無かった。
そんな教育を受けた私たちは、ごく自然に学校を卒業には“就職”すると言う道を選択した。
と言っても、私は高校1年生の時に、憧れの先輩(女性)が、そのご両親や学校に「東大に行ったら嫁の貰い手がなくなるから女子大に行くように」と言われていると聞いて、“女性ってめんどくさい”と漠然と思った。
その先輩は、共通一時試験で全国で1位の成績で、現役で東大に合格したにも関わらず、英語教育で有名な某女子大に行った。
そしてその後輩の私たちも、学校からは「女性は法律や政治、経済関係の学部ではなく家政科や良妻賢母教育をする女子大に行くのが良い」と言われていた。
そう、私ったら1年生の頃から志望学部が経済学部だったのよね。
それで、先生に呼び出されて、そんな説教を受けたのだった。
実際、大学卒業時には、4年生大学を出た学生には就職は殆どなく、公務員になるのでないのなら自分で“コネ”を探して来いと、大学の就職課から言われてた。
その頃、公務員だけは採用に関しては男女平等といわれていたし、私の出た学校は卒業生の過半数が教師になるような学校だったからね。。。

昨日の記事にも書いたように、私たちの世代は社会に出るのが最初のハードル。
記事には、研究職はポストが少なくて、せっかく得たポストを手放したくないが為に出産による休職を躊躇するとあったが、この年代の女性には、研究者や公的分野の女性に限らず、せっかく得た職を手放したくないと思う人が多かったのではないだろうか。
女性の場合、結婚や出産がそのまま職を失う道になることが多かったから。。。

記事の終わりには、

 鳥養教授は「今は周囲に男性モデルしかないためそれに合わせてしまいがち。だが、研究者も多様な働き方があっていい。今後は新しいワーキングモデルを女性たちが作っていく必要がある」と主張する。
 男女共同参画学協会連絡会は政府や研究機関に、女性科学者が育児をしながら研究を続けられるよう研究支援要員の配置や在宅勤務など多様で柔軟なメニューを用意するよう求めている。

と有るが、これって政府や研究機関に限らない。
現実の問題として、今でも子供を持った女性が働きやすい職場がそう多いとは思えない。
リンク先はもう削除されてしまったが、20日にはこんな記事もあった。

離婚母子家庭が急増、97万8500世帯に

 厚生労働省が19日に発表した「2003年度全国母子世帯等調査」によると、全国の母子世帯数(推計)は122万5400世帯に上り、1998年度の前回調査から28%も増加していることがわかった。

 「死別」を理由とする母子世帯は前回調査比18%減の14万7200世帯と少なくなったものの、「離婚」による母子世帯が同50%増の97万8500世帯に急増したためだ。日本の家族のあり方が急速に多様化していることを裏付けた形で、離婚母子家庭への支援拡充が課題となりそうだ。

 調査は、2000年国勢調査をもとに2003年11月現在で推計し、無作為抽出した全国の約3800世帯に面接して実情を探ったものだ。20歳未満の子どもが父親と暮らしていない世帯を母子世帯と定義している。

 調査結果によると、母子世帯の総数は、1952年度の調査開始以来最多となった。

 母子世帯となった理由別に見ると、「離婚」が全体の8割を占め、「死別」は12%だった。「未婚の母」も7万500世帯(前回調査比2%増)おり、全体の6%に上った。

 一方、父子世帯数は17万3800世帯で、前回調査から6%増加した。このうち、「離婚」を理由とする父子世帯は前回調査比38%増の12万8900世帯で、全体の74%を占めた。「死別」による父子世帯は3万3400世帯で、前回調査から36%減少した。

 離婚母子世帯について、父親からの養育費の状況を聞いたところ、養育費について取り決めをしている世帯は34%にとどまった。これを離婚の形態別に見ると、家庭裁判所による調停離婚をした世帯の75%は取り決めがあるのに対し、当事者間の話し合いによる協議離婚をした世帯では27%しか取り決めをしていなかった。2003年4月に、離婚した父親に養育費を支払う努力義務を課す改正母子寡婦福祉法が施行されたが、十分な効果を上げていない実情がうかがえた。また、養育費の平均月額は、前回調査より8540円安い4万4660円だった。

 母子世帯全体について、母子世帯になった時の母親の平均年齢を見ると、前回調査よりも1・2歳若い33・5歳、一番小さい子の平均年齢は0・6歳若い4・8歳で、ともに低下した。母子世帯の平均年収は、厳しい経済情勢を反映し、同17万円減の212万円だった。

 調査時点で、働いている母親は83%(前回調査比2ポイント減)で、正社員は39%(同12ポイント減)と低下する一方、パートや臨時社員が49%(同11ポイント増)となった。母親の両親などと同居する母子世帯は、37%(同8ポイント増)だった。
(読売新聞) - 1月20日1時41分更新

この記事の後半を読むと、離婚で母子家庭になった母親のうち、17%は職を持っていないし、職を持っている母親の半数がパートや臨時雇いと言う不安定な状況にある。
そんな事を考えると、結婚したから、子供が出来たからといって簡単には職を離れることは出来ないなぁ。
そして、仕事を持っていると、結婚したり、出産したりはでき難い。。。
スパイダルだね。

確かに、離婚が増えた原因の一つは女性にも経済力が付いた事もある。
でも、だからといって女性から経済力、職を奪って、日本の女性の殆どが専業主婦になるなんて実際的ではない。
だったら、子供を持つ女性が働きやすい社会を作るのが早道のような気がする。

少子化の問題では、“産みたくない女性”を産む気にさせる方策ばかり考えられているような気がする。
“子供の居ない家庭に税金”を課す案なんて、どこか方向がずれているように感じるのは私だけじゃないはず。
産みたくない女性は放っておいて、色々な事情で“産みたいのに産めない女性”を支援する方がよっぽど効果があると思うんだけどなぁ。。。

Comments:10

みりおじ 2005年1月28日 21:21

暴論かもしれませんが、

  ・専業主婦に対しての控除を撤廃する

  ・その分、働く女性の子育てサポートにお金を振り当てる。

  ・ただし、専業主婦でも子供が3人以上なら手厚い控除を儲ける(=子沢山控除)

なんてことをしないと、少子化対策にはならないんじゃないか、と考えています。


まぁ、独り者だから考えるような案かもしれませんけど(^^ゞ

COO 2005年1月29日 05:17

私も独り者なので。。。(笑)

私も、専業主婦の控除というか、
特別控除はもう役目を終えていいのではないかと思います。

そして、子供が3人以上と言わず、
保育も含めて公的教育を充実させて、
子供の教育にかかる経済的負担を軽くする。
税額や課税対象額の控除よりも“補助”の方がいいと思っています。

現在は出産に関する費用は、殆ど保険が利きませんので、
出産費用の保険などによる負担もいいかもしれませんね。

欲しい人が持てると言う意味では、
現在は保険が利かない不妊治療なども、
保険適用にするべきだと思いますね。


でも、それだけでは、産みたい人産めるという状況にはならないように思います。

あと一番重要な問題は、
子供を両親だけで育てるのではなく、(地域)で育てるという雰囲気つくりですよね。
今のように、子供が1人で外で遊べないような社会ではなく、
安心して外を遊ばせられたり、
必要な時に近所の人や公的サービスに頼れるような
(地域)社会が必要なのだと思います。
それには、地域の連携もそうだし、
交番のお巡りさんの拡充なんかも必要なのかもしれませんね。。。

一朝一夕にはならないけど、社会全体の雰囲気を変えていかないといけないのでしょうね。
今の少子化だって、1970年代には国の“政策”だったのです。
いわば、30年経って“効果”が表れたという、国策の賜物なのです。。。
少子化から多子化には、また30年ぐらいかけないといけないのかもしれません。

ぢるぢるちゃん 2005年1月29日 09:28

子供がいないと損をするという方向は
古代ローマのアウグストゥスの少子化対策と同じ方向だよね。。。

進歩なしってことなんやろか?w

COO 2005年1月29日 10:37

そうそう。

進歩がないというより、
本気で考えていないから、過去の政策を真似すればよいという
安易な方向に向くのだろうね(苦笑)

まる 2005年1月30日 12:01

子持ちです(笑)

今の日本は、安心して「子供を生みたい、育てたい」と思える状況じゃないのが問題なんじゃないですか?
経済的な事もありますが、迷走する教育方針、子供を外で独りで遊ばせるのを躊躇する様な治安、安易に開戦を支持する政府、将来像のはっきりしない日本。
もう1人生んで育てて、お国の為に(笑)貢献しようにも、そう言う状況にありませんよ。
真剣に仕事をしている人が、出産によって不利になってしまうような社会の仕組みも問題ですよね。
子供が居るって事は楽しい事だし、それだけで恵まれていると思います。
それでも、これ以上生みたくないのは、日本がそう言う状況にないからです。

個人的な意見で言えば、郵政民営化より治安を優先にはっきりした方針を打ち出して欲しいですわー。
自分のやりたい事だけではなく、今、日本でやらなきゃならん事を、優先してやって欲しいですわ。

それから、税制とかの話題になると専業主婦の特別控除が話題になり、更には一部同性から専業主婦はダメな役に立たない女性と言う様な論調がでます。
これ、すごく違和感ありますねー。
やる気もなくただ就職している人より、やる気のある主婦の方良いですよ。
この人たちが、(実質ただで)地域を作る担い手です。
やる気の無い主婦も、意味無く浪費して消費してくれので意味がある(笑)
やる気無く就職している男女は、効率を下げるだけでなく、働く意欲のある人から職を奪う「罪」な存在(笑)

COO 2005年1月30日 16:32

> 今の日本は、安心して「子供を生みたい、育てたい」と思える状況じゃないのが問題なんじゃないですか?

何故「子供を産みたくないか」と言う命題に対して、「安心して育てられないから」という事なのでしょうか?

子供を外で1人で遊ばせられない治安や、日本の将来への不安が原因で子供を産みたくないというのは解ります。
でも、そういう社会を作っているのは私たち自身なのですよね。
他から与えられるのではなく、そこに生活している大人(親になるべき人たち)がそういった環境を作っているのですよね。

日本に住む大人として、私たちは何をしましょうか?
純ちゃん1人が日本を作っているわけではない、
私たちみんながそれを作っているのですものね。

専業主婦の特別控除に関しては、
専業主婦が“役に立たない”から廃止すべしとは思いませんね。
ただ、“専業主婦”と言う立場の人が、人間として、まるさんや私、その他職をもっている人と比べて、
その1.5倍の価値があるのですか?
と思っています。
“同じ”じゃないですか?と思っているのです。

控除に関しては、一応、生活の必要な費用という意味合いです。
その金額の妥当性はさておき、
職をもつ人と、職を持たない子供は同じ生活費がかかり、
専業主婦だけが1.5倍の生活費がかかるのでしょうか?

現実の問題を考えると、
専業主婦がカルチャーセンターに通っていた時代ならそうだったかもしれないと思いますが、
今は塾通いが多い子供のほうが生活費がかかりそうな。。。(笑)


そして、全てはありませんが、専業主婦の人が自身を“専業主婦だからダメ人間”と表現するのも
その特別控除が言わせていたりするのですよね。。。

特別控除は、女性を家に閉じ込めて
職を男性だけのものにする必要があった前世紀の遺物という感じがしてならないのですが。。。(笑)

まる 2005年1月30日 22:37

専業主婦の特別控除は税に対して要らぬ不平等感を感じさせているので要らないんじゃないですか?
パートの給与を変に低く抑えている元凶も、これじゃないか?と疑ってしまいますね。
税の問題とは別に、単純に働いている女性が正しくて、専業主婦がダメと言う風な事を言う人がいますが、違和感を感じると言うダケの話です。失礼。
このご時世、専業主婦でやっていけると言うのはかなり恵まれていますね。
とにかく、これからはどんどん労働人口が減ってくるのだから、女性がもっと働きやすく、しかも、子供を生みやすい環境を作る必要がありますね。
なんか、こう書くと調子いいもんですね。
働き手が減るから働け、しかも、子供は生んで欲しいか。。。。。

純ちゃんは、最初それなりに期待が大きかっただけに(笑)、その反動で必要以上にけなしてしまうのです。
私は、彼の選挙区で育ったので綺麗な73分けの髪型だった頃から知っています。
まぁ、地元贔屓と今までの自民党に無いタイプなので期待していました(汗)
しかし、他人を納得させる説明が出来ないというのは、ちょっと政治家として問題じゃないですかねー。
論点をすりかえずに説明すれば、同意できるものもあるはずなのに、残念。
彼は、自分の代わりになる人はいないと思っている節がありますけど、本当にそうか????

COO 2005年1月31日 01:11

いえ、こちらこそ失礼しました。

尖ったフェミニスト(?)なので、
“女性”の問題になると、反応がつい激しくなってしまって。。。(^^;


1950年代、女性は“子供を産め”と言われ、
1970年代には、このままだと人口が増えすぎるから“産むな”と言われ、
そして今は。。。
全く、為政者というかお役人は勝手なものです。
1961年に国民年金のシステムを考えたお役所と、
1970年代に“人口抑制政策”を考えたお役所は同じ。
女性を“道具”だと考えているのだろうか?
と言う思いがずっとあったもので。。。(^^;


純ちゃんについては仰るとおりで、
自民党にいないタイプで、あまり周囲の意見に左右されないタイプだった事が
彼のプラスの評価で、彼の支持者の期待だったのですが、
最近の彼を見ていると
いみじくも森喜朗が「痩せているだけで、俺と同じタイプの政治家」と言った通り、
独りよがりで中身のない失言ばかり目立つように成りました。
残念です。

むぅ 2005年5月 8日 18:44

ここでのお話とはちょっとズレてしまうかもしれませんが・・・

私は身体に障害があり、産みたくても産めない身体です。
それを知ったのは妊娠してからでした。
やむを得ず中絶と言う手段を取った私たち夫婦に
周りの風当たりはとてもきつかった・・・
思い出すと今でも涙が出ます。

もちろん、あたたかい言葉をかけてくれた方もたくさんいました。
でも、やっぱり、作れるのに産めないんなら女でいる意味がないんじゃない?と平然と言われたことが時間が経った今も心に突き刺さっています。
今月の24日、私が中絶した子供の出産予定日がやってきます。
まだ、思い出すと辛いけど、産みたくても産めない女性と言うのは
色々な意味で、たくさんいると思います。

そんな方たちに対して、もう少し優しい社会になってほしいと日々願っています。

COO 2005年5月10日 00:09

>むぅさん
 私が取り上げた以外にも、産みたくても埋めない女性は多いですよね。
 社会環境さえ整えば産める女性も多いので取り上げましたが、
 社会環境だけが産めない理由ではないですよね。

 産めない、産まない事も認めてあげられるような社会になるといいですね。

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